あたたかいパンとシチュー

「重いとも。そしてその重さを楽しめ、雑種」

ギルガメシュ叙事詩を読む(3):杉の森とシュメルの都市たち

ギルガメシュ叙事詩・第三・四の書板を読みます。

(!)これは研究メモの類ではなくて、フェイトのおたくによる「感想文」です>< 原文や諸海外訳は読めていないのでごめんなさい…。なお、標準バビロニア語によって書かれた、全12の書板からなるバージョン(=「標準版」)をベースに読んでいます。

<第三の書板>
香柏の森への遠征決定〜母ニンスンの祈り
<第四の書板>
香柏の森へ向かうギルガメシュとエンキドゥ

 

『白峰の 雲海遥か 杉の山』

「香柏の森」とは月本先生訳に依りますが、香りよい木々が繁る森のこと。第五の書板に出てくる「シララとレバノン」という地名から、一般にレバノン杉と考えられているようです。「シララ」とは、ハーモン山もしくはアンチレバノン山脈のことらしいのですが、どこ??って感じだったので、google mapさんを召喚します。ついでにウルクからの距離も測ってみると…。

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いやめちゃめちゃ遠っ!? 直線距離で900km以上ありますが…。

じっさい、第4の書板・レバノン山への道行を語る中で、

まる一日で、彼らは50ベールを進んだのだった。
1ヶ月と15日の道のりもわずか3日で、彼らはレバノン山に近づいた

と書かれてるんですよね。1ベールは約10kmらしいので、10km * 50 * 3日 ≒ 1500kmくらい進んだということになるんですが…、いや〜…超人ですね…(参考になるかわからないけど、青森-東京間でも600kmくらいしかないです。青森出身東京在住のオタクより)。

メソポタミアは森がない地域なので、香り高い杉の木はたいへん貴重だったようです(ちなみにエジプトでもそれは同様で、第二王朝の時すでに、レバノン杉の交易港・ビブロスに赴いていたことが分かっています)。遥かな冒険をしてでも手に入れる価値があるモノだったんですね。

なお、ギルガメシュ叙事詩より前に成立していたシュメル語伝承「ギルガメシュとフワワ」では、彼らはレバノンではなく東方の森に向かったと考えられるそうです。が、ギルガメシュ叙事詩として編纂される際に、その位置を西方のレバノン山に変えています。

ここで気になるのがバビロニアのシナリオです(つれっとFGOの話に切り替える)。
「黒い杉の森方面(西方)」に向かうマシュとロマ二の会話にこんなのがあります。

マ:あれはウルクの東、ティグリス河の向こうにあるザグロス山脈にあると解釈されていたような……。
ロ:ああ、それは二種類あるんだよ。シュメル版とアッカド版には食い違いがあってね。古い文献では杉の森は西にもあったとされている。

この会話から、マシュがシュメル語の「ギルガメシュとフワワ」を意識して話していることが分かります。けれど答えるロマニの台詞のせいもあって、この西方の森がフワワの森なのか…つまり、『フェイト世界の「ギルガメッシュ」と「エルキドゥ」が赴いたのが、東のザグロス山脈なのか、西のレバノン山脈だったのか』が分からなくなっています。
「いや細かいこと言うなよ!」って怒られそうですが(ごめんなさい)、もしも、です。
もしも、2人が旅したのが東のザグロス山脈ならば、このシーンの趣がさ、変わるじゃないですか!

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カルデアの冒険譚を聴きながら、王が想うもかつての「冒険」…っていう。
そういうよさみがね、あったらいいなと思ったわけでした。

おまけ:なんちゃって7章地図

東とか西とか、ソラで語ってるとわけわからんくなってきますよね。ということで、なんちゃって7章地図をこしらえてみました。せっかくなのでフィールドマップも並べて眺めてみます。

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7章に出てくる都市を、google mapさんに雰囲気でプロットしたものなのですが、ホント“雰囲気”なので信頼度5%くらいで見てください…。

北部の都市
物語の冒頭、「エシュヌンナ、シッパル、キシュ、そしてカザル。もはや北部の市は全て我が腹が呑み込んだ」とゴルゴーンが語っているとおり、北部はゴルゴーンの勢力圏になっています。
バビロンは解体されて北壁になったし、クタはエレちゃんがえいや!したので、ゴルゴーン圏内とするのはイマイチですが、とりあえずざくっと線を引いています。

南部の都市
シナリオにも出てきたように、ウル/エリドゥはケツァル・コアトルの勢力下です。シュメル初期王朝の頃の海岸線は現在よりも北西にあったので、海から迫りくるケイオスタイドがより脅威に感じられますね。
ちなみにロマニの台詞に「エリドゥはシュメル神話において、最初に天から王権が降りた都市である」とありますが、多分「シュメル王名表」の話を指していると思います。

中部の都市
3節冒頭、ギルくんと兵士の会話に、「エレシュ市からの物資運搬に遅延が見られる」/「ギルス市の巫女長がほざきおって!」があります。エレシュは北壁の向こう側にある都市なので、もしかしたら人はもう住んでなくて、物資のみをウルクに運んでいたのかもしれません。ギルスはなんか元気そうですね、笑
ニップルは9節でゴルゴーン勢力に落とされてます。また、ラガシュ/ギルス/ウンマは最終局面まで生き残れていたことがダ・ヴィンチちゃんの台詞から解ります。


土地の話をまとめたら疲れたので終わります。第四の書板には、エンキドゥの素晴らしい台詞がいくつもあるので、次回はその辺りまとめたいです。