あたたかいパンとシチュー

「重いとも。そしてその重さを楽しめ、雑種」

プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!/ヘルツ! がめちゃ面白かった話

ほんと、めちゃ面白かったんだよな

1期も、その、すごく「振り切って」て、とても良いアニメだなーと思ってはいたんだけどさ…、ツヴァイ/ヘルツはふつうに面白かった。
日常パートとシリアス戦闘パートがだいたい半々くらいで組まれてるんだけど、そのどっちもが全力というかさ…。「萌え」も「燃え」もどっちもやるんだよっっ!!!って執念がすごくて。

 

新キャラクターたちもすごく良かったです。
クロエちゃんは、オリエンタルでちょっとおませな女の子って感じの登場だったけど、その内実はすごくヘビーな子。「かつて切り離された"聖杯"としてのイリヤちゃん」…プリズマイリヤの世界観でも、聖杯とかいうおそろし概念は健在なんだね…。
ヘルツ!で美遊ちゃんの正体も明らかになって、そこでやっとこの子たち3人が「聖杯によって運命を狂わされた女の子たち」だったという悲惨さがわかる仕組みになっています。いやいいよ…ずっと魔法少女して元気に暮らしていて……。

それから、バゼットさん&カレンさん。
凛ちゃん&ルヴィアさんという「先輩」の上、さらなる年長者(権威)のポジションとして登場した2人組ですが、いいですね〜。性格が破綻してるところが、特に。
2人の出身ホロウアタラクシアも嗜んでみたいなーと思わされました。

あとは、ラスボスのギルくん…。「SN勢で8枚目のカード…もしや…?」と推測していましたが、いざ邂逅してみたら叫び声がめちゃくちゃ関さんだったので分かりやすすぎオモロでした。
しかし子ギルくんは可愛いですねとても。あの霊衣を今すぐFGOに実装して。モーションも改修して(強欲)。しょたっこにもやさしいプリズマイリヤって最高だな。


あと1週間は周回を頑張ると思うので、そのお供にドライ!!も見ちゃおうと思います🏃‍♀️🏃‍♀️

 

潜入!茶花盗賊団スタジオ(90++)

前回の水着イベントに続き、今回のぐだぐだイベントでも90++クエストが登場しています。前回ボスはHP100万overのエルキドゥちゃんだったのですが、今回はHP100万overのBBちゃん。ムーンキャンサー+取り巻きのアサシンという敵構成、しかも特効礼装は無し…という状況なので、周回がむずすぎると話題になっていますね。

実際、うちのようなよわよわカルデアだとホントに大変です。アタッカーはフレンドに借りるとしても、オベロンコヤンキャストリア不在ではどうやっても2ターン攻略は無理。けれどこのクエスト、高確率で灰がドロップするので、多少時間かかってでも周りたいんですよね。

ということで、こういう編成を組みました。

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1w:全員でNP以外のスキルを利休さんに。利休さんで宝具+殴り
2w:利休さんにNP補給。オダチェン(エレナ←→ふーやーちゃん)、ふやスキル1、2。
決戦強化付与して、ふや宝具+利休宝具+カード削り
2w+α:できるだけ利休さんで宝具または殴り

…これで最短3ターンです。スキルぽちぽち多いし、カード運も絡むのでまあ安定しません。5ターンくらいかかっちゃうこともしばしばですね…。首尾よく3ターンで突破できるのは6〜7割くらいだと思います。
灰の旨みがあるから何とかやってますけど、これはもう、次のPUでオベロンお迎えするほかないかな〜と思ってきました。


しかし、「お茶を淹れる」でだいぶ素材が集まってきました。金素材は3けた集まったので、銀素材の…特に大騎士勲章を集めておきたいなと思います。いつ来るかわからないプーサーPUに備えて…!

ギルガメシュ叙事詩を読む(8):エンキドゥとの死別

ギルガメシュ叙事詩・第七・八の書板を読んでいきます。

(!)これは研究メモの類ではなくて、フェイトのおたくによる「感想文」です>< 原文や諸海外訳は読めていないのでごめんなさい…。なお、標準バビロニア語によって書かれた、全12の書板からなるバージョン(=「標準版」)をベースに読んでいます。

<第七・八の書板>
エンキドゥの死、ギルガメシュの哀悼

第七・八の書板に描かれるのは、朋友エンキドゥの死。一行ごとが切実で、哀しくて、鋭くて…。私には、これが4000年前の物語だなんてとても思えないのです。このシーンを語るのは、どうやっても無粋になってしまう気がしますが、敢えてストーリーラインを追っていこうと思います。

 

避けられぬ死の運命

ギルガメシュを讃える宴の夜、エンキドゥは恐ろしい夢を見ます。それは、神々がエンキドゥの死を定める夢でした。
アヌ曰く、「ギルガメシュとエンキドゥ、どちらか1人は死なねばならない」。
エンリル曰く、「エンキドゥが死なねばならない」。
よりによって、エンキドゥの個人神・エンリルが彼の死を定めるのですね。…まあ、エンリルのしもべであるフンババを殺してしまったのですから、道理なのかもしれません。ギルガメシュたちを応援していたシャマシュは反論しますが、エンリルはその決定を変えません(以下月本先生訳)。

「彼ら(ギルガメシュとエンキドゥ)は(略)天牛とフワワをお前(エンリル)の命令で殺したのではなかったのか。」
「お前(シャマシュ)が彼の仲間のように毎日彼らと共に行くからだ。」

シャマシュギルガメシュたちを庇護“しすぎた”から、彼らは人の分を弁えなくなってしまった…という主張なのでしょうか。そんな夢の内容を、エンキドゥはギルガメシュに告げるのでした。

エンキドゥは怒り、自らをウルクに連れてきた狩人やシャムハトを激しく呪いますが、それを聞いたシャマシュは、彼らのおかげでギルガメシュという友を得られたのだと説くのです。エンキドゥはもう、自らの死を受け入れざるを得ませんでした。

エンキドゥは泣き、ギルガメシュに思いのたけを打ち明けます(以下月本先生訳)。

「わたしを死後も思い起こし、忘れないでくれ。わたしがあなたと共に歩み続けたことを。」

そして12日ほど病に臥せたあと、エンキドゥはこの世を去るのでした。

 

自らの死を知り、動揺し、怒り、悲しみ、そして受容する。残される友への言葉を語る。
それは、「人間らしい死のおそれ」です。そのあまりにも繊細な描写にわたしは驚いてしまいます。死を目前にして人が想うことは、数千年の時を経ても変わらないのかって、そんなことを思ってしまって。
エンキドゥは夢の中で、暗く寂しい冥界の姿も目にします(以下矢島先生訳)。

入る者は出ることのない家へ

歩み行く者は戻ることのない道へ

住むものは光を奪われる家へ

古代メソポタミアの人々にとっても、死ぬこと、冥界へ赴くことは、本当に恐ろしいことだったんだろうな。


第八の書板は、そのほとんどがエンキドゥの死を悼むギルガメシュの言葉が描かれています。切なすぎて美しい言葉ばかりが続くので、どこを引用していいのかわからないのですが…(以下月本先生訳)。

「ところが、いま、あなたを捕らえたこの眠りは何だ。あなたは闇になり、もはやわたしに耳を傾けない。彼の心臓に触れても、いっさい脈打たない。」

いくら呼びかけても、いくら身体に触れても、動かない。それが「死」なのだと、ギルガメシュが理解する、理解してしまう。…鮮やかですよね。色褪せないですよね。
この部分に関しては、オリ博で出してる朗読CDも特におすすめできます。関さんの素晴らしい朗読のおかげもあり、ちょっとホントに泣いてしまう。

 

「あなたの死を忘れる者はいなかった」

最後に、Fateでの「2人の離別」について。
Fate世界のエルキドゥが「システム」だからでしょうか、7章のマーリンはその死を「電源を切られてしまった」と表現しています。

また、叙事詩のエンキドゥは「自身の死の受容」に感情が向いているのに対し、エルキドゥは、死に際しても友のことを想っていたようです。
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ほんと、ともだち思いのいい子だなあ…(推しの色眼鏡)。

また7章には、ラフムとなってしまったシドゥリさんがエルキドゥへの想いを語るシーンもありましたね。

「私タチ、ウルクノ民ハ、アナタへの感謝を、忘レハ、しまセん。
アナタハ、孤高ノ王ニ、人生ヲ、与エマシタ。偉大ナ王ヘノ、道ヲ、示シテクレマしタ。
アナタノ死ヲ、嘆カナカッタ者ハ、いなカッタ。
アナタノ死ヲ、忘レル者ハ、イナカッタ。」

叙事詩ではウルクの民がエンキドゥを愛する描写がいまいち少ないのですが…Fate世界でのエルキドゥは、ギルガメッシュ王の友として、ウルクの人々にも愛され尊ばれていたことがよく分かります。

そしてギルくんは。
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それが「悲嘆」であったと明に言う。言葉少なではあるけれど、いや、言葉少なだからこそ、沁みますね。

アニメ版第1話冒頭の印象的なあのカット…「崩れ去るエルキドゥの前で涙する王」のカットは、現実のものだったのかしら。それともキャスギルの夢だったのかしら。

 

ギルガメシュ叙事詩を読む(7):うたかたの熱狂とウルクの夜

ギルガメシュ叙事詩・第六の書板を読んでいきます。

(!)これは研究メモの類ではなくて、フェイトのおたくによる「感想文」です>< 原文や諸海外訳は読めていないのでごめんなさい…。なお、標準バビロニア語によって書かれた、全12の書板からなるバージョン(=「標準版」)をベースに読んでいます。

<第六の書板>
ウルク凱旋〜イシュタルの誘惑〜天牛退治

 

イシュタル・ドゥムジ、参戦!

第六の書板は、ウルクに帰ったギルガメシュに、女神イシュタルが「わたしの夫になりなさい」と求婚するシーンから始まります。イシュタル(シュメル語でイナンナ)は愛と戦いと豊穣の女神であり、この地域では広く永く崇拝されていた神様でした。遡ることウルク第4期には「葦を束ねた小柱」の図像で、シュメル初期王朝期には女神の姿で表現され、人々に愛され続けた女神様。古アッカド時代には、時の王女エンへドゥアンナにより、イシュタルを主人公とした物語まで編まれるようになります。
…そんな大人気のイシュタル様の求婚を、あろうことか、ギルガメシュはこっぴどく断るんですよね。しかもめちゃくちゃな悪口を並べたてて。

悪口の内容は様々ですが、その中にこんなものがあります。

「お前の若いころの恋人タンムズには 年ごとに泣くことをお前は命じた」

セリフは矢島先生訳から引用しました。この「タンムズ」は「ドゥムジ」のヘブライ語形。植物の成長と豊穣の神様であるドゥムジとイシュタルの(ひどい)関係が、別の物語「イナンナの冥界くだり」にて語られているのですが、それを踏まえて、ギルガメシュが悪口を言っているシーンというわけです。

…よし。ひさしぶりにFGOの話をします(ここはFGOのブログなので…)。
ドゥムジといえば、やっぱり彼だよね。
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「冥界のメリークリスマス」でたくさん喋ってくれたふわふわのオモロ羊。彼についてはギルガメッシュ王が直々に「なぜなにウルク」で説明してくれているのでとてもわかりやすいです。
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「我(オレ)も言いたくはないが、ドゥムジはウルクの王が神権を得て神になったもの。(略)かくしてドゥムジは『蘇る神』として地上に戻り、以後は『死と再生を司るもの』として人々に信じられるようになった」

このエピソードが描かれているのが、先ほど出てきた「イナンナの冥界くだり」なんですね。これは杉勇先生の「シュメル神話集成」にて読める(Kindleでも読める)ので詳細は割愛しますが、バビロニアでの冥界下り(権能を剥がされていくイシュタルのシーン)の元ネタに値します。
「イナンナの冥界くだり」は、お話の内容自体が面白いので、読みやすくていいなあと思います(しかもエレちゃんも大活躍!!)。

ウルクの夜、うたかたの光輝

ギルガメシュに拒絶されたイシュタルは、怒り、天牛をウルクに放ちます(FGOで出てくるグガランナ)。それはウルクを容易く破壊するおそるべき怪物でしたが、ギルガメシュとエンキドゥは協力して打ち倒してしまうのです。
エンキドゥがイシュタルに言い放つ最高のセリフがあるので、月本先生訳から引用しますね。

「お前も征伐してやろう。これ(天牛)と同じようにお前にもしてやろう。
そのはらわたをお前の脇にぶら下げてやろう」

怖いよ〜〜〜( ; ; )

この、「イシュタルにあたりが強い」設定は、FGOにも取り入れられていますね。

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これがウルクのキレた斧。

 

とにかく、仮にも都市神のイシュタル様に、不敬を働きまくるギルガメシュとエンキドゥなのですが、ウルクの人々の熱狂具合も半端じゃなかった。

仕え女たちは応えて、言った。
「人々のなかで、ギルガメシュこそ最も素晴らしい。男たちのなかで、ギルガメシュこそ最も立派である。」
(略)ギルガメシュは彼の宮殿で祝宴を催した。

フンババ退治と天牛退治で、ギルガメシュも周りのみんなもフィーバーしてるんですね。ギルガメシュフィーバー。

…しかし、その祝宴の夜。エンキドゥは夢を見ます。
それは、のちに「エンキドゥの死の暗示」と判明することになる、恐ろしい夢。その内容を知らせぬまま、第6の書板は幕を閉じるのです。引きが上手すぎなあ…。

 

さて、ここからはわたしの感想ですが、フンババ退治から繋げて考えてみると、ギルガメシュとエンキドゥの差というか、コントラストをよく感じます。
名をあげたい一心でフンババ退治に赴き、見事成功したギルガメシュ。女神には求婚されるわ、ウルクの人々にも大人気だわ…やっぱり「ノリにノッてる」んです。
一方、力も心も強いのに、フンババ退治にはずっと懐疑的で後悔もしていたエンキドゥ。そして、神に見放され、死を定められるのもエンキドゥなのです。
そんなこの2人を、ただ「仲の良い友達・相棒」と読むのは、いささか単純すぎる気もしてしまいますね。彼らの内面と結末には大きな違いがあることを踏まえて、後半の劇的な展開を読んでいきたいなと思います。

 

最後に。
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こういうの、すっごいうまいよなあって。

プリズマ☆イリヤの1期を見た

プリズマ☆イリヤの1期を見ました。
すごい、何がすごいって、「とにかく可愛いイリヤを描くんじゃい!!!」っていう下心…もとい、熱量がすごい。何気なーい感じのカットにもめちゃくちゃフェチズムを感じるんですよね。徹底してる。

お話としては、「Fateみを感じる正当魔法少女モノ」て感じでした。"ふつうの"小学生(小学生てのがやばいよな…)イリヤちゃんが、ひょんなことから魔法少女になってしまう!んだけど、とにかくイリヤちゃんがすごく元気なのでstay nightの記憶が上書きされそうです。「やっちゃえ、バーサーカー!!」て言わない。

あと、アーチャーのクラスカード(えみやん)を"インストール"して、その力を自らに取り込む…くだりはびっくりしました。Fate的にこんなんアリなの?!アリなんですよね、すげ〜。。。しかも戦闘シーンくそかっこいいんよね、すげ〜。。。

かと思えばイリヤママの「どんなにすごい人だって、独りというのはつらいものよ」なんて台詞に、なんか特別、じーん…としたりする。こういうの、いいよね。

とにかく見終わって、よし次も見るか!と思ったら、シリーズめちゃくちゃあってびっくりしました。4クール+劇場版?!そんなことある??あるんだよね…市場でけ〜っ!

暗黒佐和山城・ピラミッドの乱

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な、なにしてるんですか〜?!?

ライダークエストで「暗黒佐和山城・ピラミッドの乱」だったので、まさかとは思いましたが…。
あれですか。最近わたしがギルガメシュ叙事詩ばかり読んでるからですか。それとも最近周回にお連れしてないからですか。レベル100になったカーマちゃんが、「…😕」って顔でみてますけど。

しかもなんだ?

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連れてるのが「暗黒左官」「暗黒宮大工」…etc。つまり、今まさにピラミッド佐和山城を建築されようとしてるとこってこと???やめましょうよ!!

ギルガメシュ叙事詩を読む(6):続・エンキドゥは何故フンババを殺したか

前回の続きです。

「エンキドゥはなぜフンババ殺しに至ったか?」…その真相に迫るべく、2014年に新しく公開された第五の書板を読んでいきます(どうしてこんな所に迷い込んでしまったのか…)。

 

この書板は2011年に発見され、2014年に論文のかたちでその内容が発表されました。なんと論文は誰でも読めてしまいます。
https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.5615/jcunestud.66.2014.0069
この発見により、第五書板は全324行から成ることが分かりました。新しい書版には、①1〜46行、②61〜103行、③249〜276行、④300〜324行が含まれているので、それぞれの内容を確認していきます(ひえ〜〜っ……)。

 

① 1〜46行:香柏の森の姿

第五の書板の冒頭部分であり、96年の月本先生訳で欠損となっていた15行以降が補われます。渡辺先生が和訳して下さっているので、それを参考にさせていただきました。
東洋英和女学院大学学術リポジトリ - 東洋英和女学院大学学術リポジトリ

ギルガメシュ達が辿り着いた森の、ゆたかな描写。ウルクの人々が恐れたフンババは、自然の中で動物や昆虫たちと共存する統治者だったんですね。元論文でも言及がありますが、この描写は、

昼も夜もフワワのために楽士のように奏でる

…と、ヒッタイト版にも引き継がれます(月本先生訳)。

現代日本に生きる私の感覚ですが、
「乾燥がちなメソポタミアの都市、暴君・ギルガメシュ/(人間サイド)」 ← →
「豊かな杉の森、動物たちに愛される守護者・フンババ/(神サイド)」というのは、すばらしい対比構造になっていると思いますし、何よりそのはざまに「都市化した神の子・エンキドゥ」がいるというのは、話の作りが上手すぎますよね😭

ギルガメシュ叙事詩って、まず純粋に話が面白いんだよなあ。

② 61〜103行:エンキドゥとフンババの関係

ここ、審議ポイントです。
ギルガメシュとエンキドゥを見て、心乱されるフンババ。それを無視してフンババ殺害を促すエンキドゥ。そしてシャマシュに祈るギルガメシュが描写される一幕。第2欄に相当すると思いますが、元々の書板も新書版も欠損が多くて、正確な文意を理解することは難しいと思います。
論文ではこの箇所について、「かつての知己であるエンキドゥが再会しに来たのだとフンババは考えていたが、その実は殺害しに来たのだった…」という展開の辛辣さを語っているのですが、どうもそれが「エンキドゥとフンババはかつて『友』であった」というSNSトピックにつながったようですね。
しかし、「2人(?)が友だった」という明確な描写はありません。そもそも、既存書板の第1欄に、

エンキドゥよ、なぜお前はギルガメシュをわが前まで連れて来たのか。……お前はよそ者である敵と共に立つのか。

というフンババのセリフがあり、「どうも2人は昔からの知り合いだったらしい」ということは、すでに以前から知られていたわけです。また個人的には、古バビロニア版の第3の書板相当の部分にある、

エンキドゥを前に行かせなさい。(略)フワワに対しては、彼のあらゆる策略を用いよ。以前、彼は仲間を助けていたのだ。

という長老達の忠告が、「エンキドゥに“裏切り”をさせる」セリフに思えてならないんですよね。
さらに、エンキドゥの個人神はエンリル、フンババを森の守護者として定めたのもエンリル…ということで、エンキドゥとフンババは「エンリルつながり(?)の者達」と読むこともできる気がします。
というわけで、この件でワ〜ッとなるのはなんだかな、と思うんですよね(二次創作でやるのは全然OKだと思いますが!)。

また、この件でネットサーフィンをしていたら、こんなブログに出会いました。

ギルガメシュ叙事詩の新たな写本が発見された - ユートピアを求めて

「友問題」を含め、元論文準拠で解説して下さってるすごい記事です。↑の話を考えるにあたり、たいへん参考にさせていただきました。。。ありがとうございます。。。

③ 249〜276行 :フンババの涙

追い詰められたフンババが、エンキドゥに説得を、ギルガメシュに命乞いをするシーン。第4欄に相当する箇所ですが、わたしはこの部分が新書版の中でいちばん好きです。
英語がめちゃくちゃ苦手なのですが、部分的に訳します(アッカド訳はできない…)。

エンキドゥは口を開いて、ギルガメシュに言った。
「友よ、あの鳥を捕らえよ。
雛鳥どもが、いったいどこへ飛んでいけるというのか。(略)」
フンババはエンキドゥの言葉を聞き、顔を上げ、シャマシュの前で涙した。
その涙は、シャマシュの威光の前に流れ落ちた。

この「鳥」「雛鳥」は、古バビロニア版にも登場し、月本先生訳では「フワワのとりまき、ないしは手下の比喩」とされています。新書版の冒頭で、様々な鳥達がフンババに付き従っていたことをふまえると、まさにフンババに仕える仲間達のことなんでしょうね。エンキドゥは、それすらも捕らえて、おそらくは殺せと言うのです。
そんな冷酷なエンキドゥの言葉を聞いて、フンババは涙を流します。ここ、おそらく既存書版では読み取れなかった部分なのですが…、実はフンババは涙を流してまで、エンキドゥに救命を頼み込んでいたのでした。
なのにエンキドゥは取り合わない。フンババを殺せと、強くギルガメシュを唆すのです(いやむしろ、「自らの迷いを振り切るように、敢えて強く」なのかもしれないな…、なんて思うのは、空想のしすぎだろうか🥲)。

④ 300〜324行 :エンキドゥの後悔

フンババ殺害の後、木々を伐採し、森をあとにするシーン。第五書板の第6欄、ラストシーンにあたります。欠損していた前半部が補われ、ここに注目すべきセリフがあることがわかりました。またも雰囲気で訳します(誰かやってくれ〜…)。

エンキドゥは口を開いて、ギルガメシュに言った。
「友よ、私たちは香柏の森を不毛の地に変えてしまった。
私たちは、ニップルに住まうエンリルの審問にどのように答えようか。
「暴力によってフンババを殺害し、森を踏みにじるまでにおまえ達を至らしめた怒りとは、いったい何なのか」との問いかけに。」

エンキドゥ、明らかに後悔してますよね…。前回のエントリにも書いた通り、「エンリルにバレる前にフンババを殺してしまおう」と、ギルガメシュを鼓舞し続けていたエンキドゥですが、いざ殺してしまった後も、やっぱりエンリルが気になっているのです。…そりゃそうだよなあ、遅かれ早かれエンリルにはバレてしまうんだから。

 

エンキドゥはなぜフンババ殺しに至ったか(再)

ここで当初の問いに立ち帰ります。エンキドゥは、どうしてフンババを殺してしまったんだろう。
◎エンキドゥがフンババを殺したかった?
→ノー。エンリルのしもべであり、かつての知り合いだったかもしれないフンババを殺すことには、出立前から殺害後までずっと反対だった。
ウルクの人たちがフンババを殺したかった?
→多分ノー。出立前に長老会の人々はギルガメシュを止めているし、母ニンスンも不安であった。まあ、フンババを倒して貴重な木材を入手できればウルクは潤おうんだろうけど、ギルガメシュの直接の目的は「名をあげる」こと。ギルガメシュにとって、木材は多分副産物。
シャマシュに唆された?
→うーん、これも多分ノー。シャマシュは何度も2人を助けてくれるけど、彼がフンババ殺害を唆したわけではない。フンババを倒したいのはあくまでギルガメシュの意志である。第三書板に「シャマシュが嫌う<全悪>を国から滅ぼすまで」という一文があるけど、この<全悪>が「呪術文書などでの悪霊の呼称」であることを考えると、シャマシュフンババを実際に嫌っていたわけではないと思うんだよな(訳は月本先生標準版による)。

◎じゃあなんで!!?
→わからん!!!(泣)
理性的に考えれば、やっぱりエンキドゥはフンババを殺すべきでは無かったし、エンキドゥ自身もそれを分かっているのです。だけど実際に、エンキドゥはギルガメシュを鼓舞して、ギルガメシュの望みを叶えてしまった。
…もうこれは、理屈じゃないと。エンキドゥの「友を助けたい」という友情ゆえにですと。そう言うしかないんじゃないかと思ってきました。

それに比べ、ギルガメシュは呑気なものですよね。この時点では、「めちゃ強い怪物を倒したい!」というシンプルな気持ちだけでいるでしょうから…。この旅の貢献度で考えれば、断然エンキドゥの方がギルガメシュより頑張っていると思います。
けれどこの貢献度の差が、のちの「神々に愛されるギルガメシュ「神々に見放されるエンキドゥ」の対比を、より鮮やかにしてゆくのですから、つまりは物語がめっちゃ上手なんですよね。

 

ここはフェイトを遊ぶブログのはずなのに、いっさいフェイトの話をしないエントリになってしまいました。
次は第6の書板、いよいよイシュタル様回ですね!