あたたかいパンとシチュー

「重いとも。そしてその重さを楽しめ、雑種」

ウルクに戻る王の髪を、駿府城の風が揺らして。

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ふじのくに野外芸術フェスタ2022静岡・ギルガメシュ叙事詩

観てきましたよ〜〜〜最高だった、最高のお芝居だった。。。来てよかった、ありがとう。。。。。。

静岡県駿府城公園。屋外に組まれた特設会場で、初日の幕があがります。
18時15分ごろ、開場。わたしの席は最前列のほぼセンター(なんだこの特等席は)。
昼と夕焼けのはざまの淡茶色の日光が、シンプルな舞台に落ちています。1ベル・2ベルはブザーじゃなく、ハンドベルの音だった。今から始まるのが「舞台」じゃなく、「叙事詩」あるいは「吟遊」であると告げられた気がする。

月本先生訳のギルガメシュ叙事詩は、とにかく日本語が綺麗です。ほかの訳を読んでないから比較はできないけど、うつくしく、それでいて耳に残る言葉。
そんな先生訳の冒頭文「深淵を覗き見た人について、わたしはわが国人に知らしめよう。すべてを知った人について、すべてをわたしは教えよう」…この言葉の反復、解体、共鳴から舞台はスタートします。
「深淵」「深淵」「深淵」…。連なる言葉に、生楽器の演奏が重なって。不思議ですこし不気味。何かがはじまる予感がする。その混濁の中、舞台装置を倒しながら登場するのが、ギルガメシュ王。か、かっけ〜〜演出だなあ⁉︎


物語は、第1〜第11の粘土板を順に追うかたちで進行する。これにはすこし驚いた。尺の問題で、どこかだけ切り出されてしまうと思っていたからだ。でも結局、イシュタルのくだりと、シドゥリのくだり以外はだいたいやってくれたと思う。すごいことですよ。
最初の盛り上がりは、ギルガメシュ王とエンキドゥが出会い、戦うところ。止め絵の格好良さも、殺陣的な格好良さもどっちも魅せてくれました。

続く盛り上がりは、やはりフンババ退治でしょう。巨大な人形の演出も、予想よりずっとずっとずっとカッコ良かったです。人形にすることで、「人ではないもの」「神性」をあらわしているんですね。杉の森は、本来ヒトが侵してはいけない場所だったんだということが直感的に伝わります。
ところで演出の宮城さんは、ギルガメシュ叙事詩に含まれる「自然破壊」のエピソードを重めに取り上げて読み解いているようです。ゆえに、エンキドゥは杉の森・フンババと近しいものとして描かれ、フンババ退治の後、ギルガメシュが杉を伐採するシーンでは、エンキドゥも痛みを受ける演出が挟まっていました。イシュタルのエピソードが割愛されていることも相まって、フンババ退治がエンキドゥの死に直結しているような構成。
読み解きに正解も不正解もないわけですが、わたしはあんまり「自然破壊」とエンキドゥを重ねて読んだことがなかったので、これは新鮮でした。

やがてエンキドゥは死に、ギルガメシュはひとり、孤独な旅に出ます。ここからの人形を使った演出は素晴らしかった。宮城さんはこの不死を求める旅を「王自らのインナースペースへの旅」と読み解いていて、それゆえに人形で表現しているのだとか。なるほど確かに! これは、傲岸不遜な王の、自省の旅なのだと…。新鮮、発見、納得です。

旅の行く末、ラストシーン。不死を手に入れられなかったギルガメシュ王がウルクに戻るシーン。
船に乗ったギルガメシュ王が、高く高く、手をあげる。
その時、駿府城公園に冷たい夜風がふと吹いて、ギルガメシュの髪の毛をさあっと揺らしたんです。それを見て、わたしは、「ああ」と思いました。「ああ」。人の命は儚く、神にも、自然にも敵わない。だけど、彼らが作った城壁の街ウルクはここにーー。バビロニアのラストも思い出すような一瞬。なんだか、じーんと。しちゃったよ。


大筋の感想はこんな感じです。あとはそうですね、衣装小道具の造りが素敵でしたね。「ラピスラズリの紺碧色×黄金」の、ギルガメシュ叙事詩鉄板の組合せ。楔形文字が刻まれた大斧もかっこよかったです。
最前列ほぼセンターだったので、ギルガメシュ王の大斧で1回、小斧で1回、斬って頂くこともできました。カーテンコールでもすこしサービスしてくれた気がする(気がする)。
あと、エンキドゥの衣装メイクは素晴らしかったですね…。ふわふわしててコミカルでかわいかった…。
客層は、演劇人ぽいひとから家族連れまで幅広かったのですが、フォウくんのパーカーを着た中学生くらいの女の子2人組をお見かけしました。えらいなあ。興味を持って、チケット代払って、誘い合わせて来たんだ。ほんとうにえらい。きっかけはなんだっていいんだよ。今日の経験が、きっと15年後の君たちの心をうつくしくするんだよ。そう言ってあげたかったけど、声掛け事案になるのでやめました(ガチ)

うわ、もう2000字書いてる。眠くなってきたしそろそろ切り上げ。
そうだ。客入り客出しで、演出の宮城さんご自身が入り口に立たれているのが印象的でした。

宮城さん、沢さん、SPACの皆さん、素敵な経験をありがとうございました!!