あたたかいパンとシチュー

「高所恐怖症パイロット?」

Heaven’s Feel III. spring song 感想メモ

Heaven's feel 第3章、見終わりました。ほんとよかった、ほんとよかったです………。

 

オープニングからクライマックス

毎回オープニングがカッコいいHFですが、第3章は、ベッドの上で倒れていた慎二の瞳を、そっと閉じる士郎のシーンからスタート。死んでしまった慎二の顔がとても美しく描かれていて、やっぱ慎二もヒロインだったんだなと思いました(ほんとね)。

続いて、衛宮邸に現れる桜のシーン。
「先輩は、私が守りますから。だって…私の方が、強いもの?」
ここの下屋さんの演技、最高です。特に「強いもの?」のところね!"酔ってる"桜が、妖しくて美しくて可愛くて…本当に素敵です。

 

オープニング・クレジットはもちろんカッコ良い梶浦ミュージックで。言峰の語りに乗せて、影絵で第2章までを振り返っていきます。
「客席からでは見えないものがあるというのなら…、私も、舞台に上がるとしよう」
いやあ、演出が本当に洒落ていますね。

この冒頭部分、時間にすると12分強しかないのですが、本当に完璧だと思いました。前回までの振り返りをしながら、ヒロインたち全員の顔出し。そして慎二の物語を幕引いておいて、言峰の物語をスタートさせる。
すごすぎです。完成度が高すぎです。

 

言峰編、始まってしまったか?

なんと言峰&士郎、共闘します。切嗣や桜の話を語り合う2人はなんだかやたら息があっていて…その理由は、ラストに回収されるのですが。
「衛宮。助けた者が女ならば殺すな。目の前で死なれるのは、なかなかに堪えるぞ?」
そしてこれ、名台詞では?
「では、衛宮士郎。登山の経験はあるかね?」
そしてこれ、アイカツでは??


続く、士郎vsバーサーカーのシーン。
黒化してもイリヤだけを見ているバーサーカー。「自分を置いて逃げて」と言うイリヤ。そしてイリヤをそっと抱きしめる士郎。
「兄貴は妹を助けるもんだ」
士郎…やっぱお前すごいよ…パーフェクトコミュニケーションだ……。
イリヤの瞳アップ。まつ毛の繊細な描写がうつくしい。

士郎、バーサーカーに対抗するため、アーチャーの腕を解放します。
向かい風、嵐の中をゆく士郎。そこでおなじみミュージック「EMIYA」のイントロが流れ始めます。
イントロは長め、アレンジはHFバージョン。ライブ特殊イントロみたいでガチであがりますね。

やがて、嵐の向こうに見えるエミヤの背中。
「……ついて来れるか」
さすが背中で語る男っ!

 

やっぱりイリヤの話していい?いいよ

なんとか帰還した士郎は、イリヤから聖杯戦争の「真実」を聞かされます。300年前、アインツベルン・遠坂・間桐の三家で目論んだ計画。
天の杯。ヘブンズフィール。魂を物質化する魔法…。
おお…さすが最終ルート・最終章といった感じですね。種明かし編です。

そしてやっぱり、HFはイリヤがすごい。この戦いが終わったら一緒に暮らさないかと言う士郎に対して…、イリヤ、指先で士郎の口を押さえて。悲しい目をして首を振って。イリヤ、自らの「先」がないことを…もうどうにもならないことを知っているからこそ…、これ以上士郎に話させたくない、聞きたくないのかな…。士郎も、イリヤも、辛くなってしまうから。

「士郎、しゃがんで」
しゃがむ士郎。小さな手のひらをひょこひょこ、と動かして、(もうちょっと)のジェスチャー
素直に、さらにしゃがんだ士郎の頭を…撫でて。
「いってらっしゃい、士郎」
お姉さんだ…イリヤはお姉さんだ…(感涙)。
言わずもがなこのシーンは、第二章冒頭のイリヤを思わせる演出になっていますよね。近いうちに訪れる別れを予感させられる、切ない一瞬です。

 

VSセイバーも語らないわけにはいかないじゃん

いかないじゃん!( ; ; )
大聖杯地下。セイバーオルタvsライダー+士郎のシーン。
「桜を助けるために、お前は…邪魔だ」
そんなこと…っ、そんなこと…っ。
いや分かるよ。これは本当に「邪魔」なんじゃなくて、士郎が、セイバーへの想いを断ち切るために、敢えて言った言葉だと思うよ。だけどもこう、アレじゃないですか。士郎とセイバーと言うのは…切っても切り離せないような…そういう…そういうのじゃないですか!!
でも、そんな甘いこと言ってたら、きっと桜は助けられない。そういうことなんだよね。


一方このシーンは、ライダーさん大活躍の一幕でございました。なかなか他ルートでは活躍を見られなかったからね…うれしいね。
肉体美、そして機動力。魔眼はもちろん、蹴り技でセイバーを圧倒していくのもカッコよかったです。
「士郎が気になりますか?動きませんよ。私は、信頼されていますので。…ああ。貴女は確かーー」
この煽りも最高。

そしてここ1番の宝具。セイバーのエクスカリバーに合わせて士郎、ローアイアスを展開(花弁は4枚)。2章でエミヤが見せたアレ、ですね。
攻撃を防ぐ士郎の後ろでライダーは準備。そして宝具・ベルレフォーン。これ、ヤシマ作戦だ!!!

とどめは、士郎の手で。セイバーの胸に剣を突き立てる。
……ここ、第二章ラストの、桜のシーンとの対比と言えるやもしれません。桜にはできなかったそれを、セイバーにはしたのですものね。

 

「あなたの辛さはあなたのもの」

桜vs凛のシーン。
桜に対峙した凛、宝石剣ゼルレッチを解放します。黒い影を操る桜を、まばゆい虹色の輝きで圧倒していく。カッコ良いけど、とても残酷なシーン。
桜は、才能こそあれど、ちゃんとした魔術の教育を受けられなかったんですね。だから、どんなに魔力量を持っていても、一度に出力できる量は頭打ちになってしまう。「ゼルレッチ」の名前も知らない。すごく切ない状況です。

思わず今までの辛さを吐露してしまう桜。
けれど、そんな桜に対する凛の返答は。

「だからどうしたっていうの?それ」

これ、すごくないですか。
「誰かがどんなにひどい日々を送ってきたとしても、その辛さは理解できない、だから理解しようとも、できるとも思わない。あなたの辛さはあなたのもの」…この考え方って、理解できるようで、けれど「どきり」と来るようで、だけど最も真摯であるようで。

似たようなところだと、直前の桜と言峰の会話でも、
「私がどれだけ苦しかったのか、知りもしないで!」
「知らんし、知る必要もない」
のような掛け合いがありますし、FGOプレイヤーとしては、エレシュキガルちゃんと藤丸のやりとりを思い出すシーンでもあります。もしかしたら、型月文脈では頻出なのかもしれません。

そしてもちろん、「あなたの辛さはあなたのもの」価値観は、けして憎悪や軽蔑から来るものではないのですね。
続くのは、桜にとどめを刺せない凛のシーン。
すべては、真摯な愛ゆえなのでした。

 

「桜を迎えに行く士郎」

ついに桜と対峙する士郎のシーン。ここは、3部作ならではの構造的なエモが光るすばらしいシーンでした。
桜の言葉に臆せず、桜へと歩みを止めない士郎。ここは言わずもがな、第2章の雨のシーンと被せていますよね。さらに第2章の当該シーンは、第1章ラストの雪のシーンとも被せていますから、全3章通して、「桜のもとに士郎が歩みゆく」構造を取り込んでいることになります。これが桜と士郎の核だと言うように。

 

そしてエモの追撃。
「私、いっぱい人を殺しました。それでも先輩は!生きていけっていうんですか!?」
「そうだ!当然だろ!奪ったからには、責任を果たせ!!」
『奪ったからには、責任を果たせ』…これを、士郎が言う重さ。かつての/今の聖杯戦争を生きのびた/生き残ってしまった2人のぶつかりあい。すごすぎです。
(さらにこのセリフを語りながらアーチャーの腕の封印を解くので、トリプルミーニングくらいになってそう)

士郎、ルールブレイカーを投影し、桜の胸に刺します。
圧倒的な構造エモを展開しながらも、その刺し方描写は非常にフェチズムを感じられるカットに。かつ「ルールブレイカーの投影」は第1章で士郎が目撃してるから可能…というロジカルぶりまで。隙がないです。

 

プリヤの世界線に行っていい?いいよ

いやもう、お腹いっぱいじゃないですか。
なのにHFはまだまだ盛ってくる。士郎の前に立ち塞がったのは、言峰綺礼さんでした。えっ何…? このひとずっと士郎のこと待ってたの…??

殴り合いバトルの中、2人は互いのことを理解し、認め、分かり合っていきます。
「自身に還る望みを持たぬお前と対極に位置する。だが、同質の願望だ!」
「…ああ、そうか。俺たちは、共に自身を罪人と思い、それを振り払うために、ひとつの生き方を貫き続けた」
この、最後は殴り合いでぶつかるほか無いだろ!って展開は、FGOの終章ゲーティア戦を思い出しました。というか逆か。もともとHF知っていた人は、「これ、HFでやったところだ!」てなってたんだろうな。

そして言峰に勝ち、ついにアンリマユを討とうとする士郎。その前に現れたのは、神々しい光をまとったイリヤでした。

ごめん…HFでいちばん心に残ったシーンはどこかって訊かれたら…ここなのだわ……。無理…イリヤ…どうして……。

「私は士郎のお姉ちゃんだもん。なら、弟を守らなくっちゃ」

いや涙腺崩壊…。すみません…ここは語るに落ちるというか…何も言葉が出ん……わたしはプリヤの世界線に行く………………。

 

それでも、手をとって

エンディング。真っ青の空、弓を引く桜。
第1章の名オープニングの再演。

桜のそばには凛がいて、2人は、手をとりあって世界を歩く。時の流れ、季節の巡り。凛のナレーションが胸に沁み入りますね。
そしてある雪の日。ふたりが出会った人形に、鳥籠のなかの「士郎の魂」が結びついて。
確実に変わったはずなのに、まるで何も変わらないように、士郎はいま、桜の隣にいる……と。

 

ここまでのシーンの、心に湧き上がる言葉にならない感情がすごい。これはなんなんだろう…。 桜と凛が並ぶ姿は喜ばしい。けれど士郎がいないということの、その壮絶な喪失感。「魔法」によって繋ぎ止められた士郎の魂、それを持って世界を歩く2人の、なんと切なくうつくしいことか。
そして、士郎が「蘇った」後の、「これでよかったのかな」感…いや、いいはずなんだよ…たしかに士郎は帰ってきたんだから…。
「ねえ。桜、幸せ?」
「……はい」
桜だって、笑っているんだから……。

 

複雑な感情を孕みながら、エンディングテーマ。

「それでも手をとって、隣に、佇んで」

冬木の街に響く、そんなワンフレーズ。
分からない、「ただしい」ことなんてわからないのですね。
いつだってきっと最善をしてきたけど、過去の傷も罪も、何も消えてはくれない。これは、「それでも……」と歌い出す、少女たちの物語。

やがて彼女たちは、あの夜に願った「お花見」へ。
かつて「暖かな幻想」だったものは、いま形を変えて現実になっていた。
「幸福」の前で、脚がすくむ桜。
やっぱり桜を迎えにきてくれる、士郎。
そして2人はもう逃げない。
交わらない対向車線をゆくのではなく、2人は並んで、その白線を乗り越えてーー。

 

総括…できるかーっっ!!!

無理すぎる。詰め込まれてるものが多すぎて、総括なんて無理すぎる!!!泣
このメモだって、だいぶはしょって書いたのだ。なのにこんな量。ほんとうは全シーン語れるところがあるような、そんな濃密な3部作だったのです。はーすごい。

ホントに面白かったので、これは本家ゲームもやらなきゃ嘘だろって気になってきました。レアルタ・ヌア版を…やるか……。