あたたかいパンとシチュー

「高所恐怖症パイロット?」

思索の水底

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前エントリの計画通り、事がはこびました。

うれしいねえ。

 

……ここからはわたしのはなし。

 

 

明言するのは初めてだったかな、今年の6月に腎臓がんが見つかった。がんはとても大きくなっていた。

8月に、右腎ごとの摘出手術。昨日、手術後はじめての検査にいってきた。

手術は成功していて、がん自体はちゃんと取れてたことがわかったけど、血液検査の調子が良くなくて、また別の臓器を検査することになっちゃった。

 

人生の過酷さと残酷さを感じてしまう。人の命、人の力には限りがあって、健康と幸福は当たり前にあるものではないのでした。

 

しかし、身体をむしばむがんは、すなわち「わたし」。心を苦しめる自責の感情も、また「わたし」。世界を憎悪しているようで、その実わたしは、わたし自身に刃を向けようとしているのです。

 

…久しぶりにマイルームでみんなと話したけれど、王様は、永遠に損なわれない肉体が欲しいんだそうだ。わたしは、せめて永遠に損なわれない精神が欲しいな。

……なんて。

 

"けして損なわれない、完全と永遠"。

「そんな夢物語の理想を、いまだ捨てられないのですね」と、半ば自虐的に言う。思う。けれど、祈るだけなら許されたい。

深い深い、思索の水底で、わたしはいまも、遠い熱砂の海を想っている。

 

…けれど別の話も。

病気の前後でまるで世界は一変して、人生は分断され、過去のわたしと今のわたしは外見だけ同じの別物になってしまったような日々だったのです。

だけど思い出しました。まだ病気になるなんて知らなかった頃、アヴァロンルフェを読んだわたしは、いつか必ずトリスタンをお迎えして、ありがとうを言おうと思ったのでした。

その約束が昨日、叶って。その約束を思い出して。ああ、時間はちゃんと連続していて、過去の想いは消えることはなく、たしかにわたしのもとに帰ってきたんだなと思ったのです。うれしいことです。

 

 

王様とは、理想と渇望を共有しているように思うけど、トリスタンとは、連続性の幸福を共有することができました。そんなピックでした。

…いや、共有できましたなんて書いてるけど、その実わたしの「実感」なのだけどね。けれど、どちらも確かに、わたしの「実感」なのだから、それはそれでいいよね。

 

「人の生は労苦で、大地の下にこそやすらぎが多いのだ」と。ああ、きっとそうなのだろうけど、まだ何もあきらめられず、けれどうつくしい何かでありたい。ありたいなあ。